日本エイズ学会特別教育セッション_症例から学ぶHIV感染症診療のコツ

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HCMI-J

協賛:GSK

●2002年(第16回日本エイズ学会・名古屋)INTERACTIVE_Case1
  座長: 青木 眞 先生(感染症コンサルタント)
    岩本 愛吉 先生(東京大学医科学研究所 教授)
「Interactive Session−症例から学ぶHIV感染症治療のコツ」
Michael S. Saag. MD (The University of Alabama at Birmingham)
山元 泰之 先生(東京医科大学 講師)
※スライド画像をクリックすると拡大表示されます
 
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まえがき:
HIV感染者の増加も重大な問題ですが、HAARTと呼ばれるカクテル療法の初回の組み合わせに加えて耐性検査を踏まえたうえでのサルベージ療法の組み立てといった高度な知識が頻繁に現場に必要とされる時代になった事も見逃せません。AZTやddIだけを単剤で処方していた時代に比べて「さじ加減」が患者さんの予後に大きく影響を与える時代になったのです。
アラバマ大学からサーグ先生を迎えてHAART開始時期の問題、繰り返しサルベージに失敗した症例に対する処方の選択、産科症例、、、と今年も実際に臨床現場で遭遇する問題をタイムリーに拾い上げた症例検討会・インタラクティブセッションになりました。
症例1の#2のコメント
症例1は全体として治療開始時期を決定するにあたりウイルス量よりもCD4の値が重要であることを示したものです。参加者の多く(49%)はCD4が200以下になったら開始するというオプション6を選択しました。しかしサーグ先生はもう少しCD4が高い時期に、具体的には300台の前半くらいでHAARTの開始を考慮したいという趣旨の説明をしておられました。勿論、このあたりのタイミングは専門家同士の間でも多少の温度差はあるものですが、以前のような「500を割ったら開始」という時期ではなくなっている事をよく反映した「投票」結果でした。
症例1の#3のコメント
同じような症例で「CD4が700であったらどうか?」という質問ですが、既述の解説のように多くの方が治療開始をせずに経過を追うというオプション8を選択されました。ウイルス量はCD4ほど治療開始の判断にあたって重要な要素にならなくなってきている事が確認されました。
症例1の#4のコメント
今度はCD4が284で一応治療開始をするという前提で処方の組み合わせを問う問題です。EFVを柱としたHAARTの組み合わせがpopularな我が国では当然のことながらオプション3が最も人気が高かった(60%)です。様々な処方が正解と考えられますが、ここではオプション5(3つのクラスを全部使用)と7(治療延期)は誤りとされました。最近、欧米で使用される事の多くなったテノフォビルを使用したオプション6も正解です。山元先生はオプション3は人気が高いが一方で耐性バリアが低いので注意が必要であるとコメントされていました。岩本先生も同様のコメントをされオプション1、2、3のどれでも良いと説明されていました。サーグ先生はテノフォビルを含むオプション6は1日1回と服用のしやすさ、忍容性の高さなどから優れた処方であると指摘されました。
症例1の#5のコメント
「CD4が34、ウイルス量も10の5乗という進行した症例でどのようなHAARTを選択するか?」という問題です。ウイルス量の多い症例でもNNRTIがダブルプロテアーゼと同様の効果を発揮する事は知られていますが多くの方(34%)はNNRTIよりもダブルプロテアーゼを使用するオプション2を選択されました。サーグ先生はオプション4は抗ウイルス効果が不十分、オプション5は今後の薬剤選択のオプションを失うという理由で却下されました。オプション1では単独で使用されるPIとしてはNFVがもっとも多く使用されますが、ダブルプロテアーゼの処方よりも失敗率が高いと指摘されています。山元先生は長期入院症例でウイルス量が非常に高い症例であれば場合によってはオプション5でNRTIを複数で使用しながらウイルス量を低下させ、それから二つのクラスのみに絞る可能性もあるとコメントされました。
症例1の#8のコメント
初回処方の組立の重要性が指摘されました。特に忍容性の高い処方を組む事が重要であると指摘されました。
症例1の#9のコメント
このスライドの説明をするうえで極めて大切な事をサーグ先生は話されました。それはHAARTを使用するうえで最も重要な事は「臨床的にHIV感染症が進行する事を押さえる事」であるという事です。これが達成されていればHIVが検出されても、ある意味ではHAARTは成功していると言えます。しかし初めての処方を開始するのであれば単なる「臨床像の悪化をくい止める」事よりも更に高い目標である「耐性ウイルスの出現防止」が重要になります。言い換えれば「ウイルス学的な失敗というのは臨床状況により色々である」と考える事ができます。初回や2回目の処方の組み合わせであれば「ウイルス増殖を検出限界以下に抑制し耐性ウイルスの出現を可能な限り抑制する事」に主眼を置きますのでウイルス量が50 copies/ml以上になれば失敗と考えられます。逆に4回目、5回目の処方であれば耐性ウイルスは既に存在しており検出限界以下のウイルス量など実現不可能でありますので、この場合の目標設定は「臨床的な進行の抑制」であり、それが可能になる範囲でのウイルス量は「許容範囲」と考える事もできます。
 ですから「正解」は臨床状況によりどれもがオプションになりうるというものでした。
症例1の#10のコメント
このグラフはピンクの実線が成功例、黄色の破線が失敗例ですが、注意深く見るとウイルス量が増加してきても直ちにCD4が下がらずおよそ0.5logほどの増加を認めて初めてCD4が下がり始める事がわかります。このあたりの事情を理解したうえでウイルス学的な「失敗」を臨床的に判断する必要があります。

 
 
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HIV Care Management Initiative-Japan